地域限定正社員という言葉をご存知ですか？正社員やパート、契約社員などとは異なる雇用形態で、安倍政権の経済成長戦略のひとつとしてスタートしたものです。今回は地域限定で勤務する地域限定正社員について、正社員やパートとの違いや、そのメリット・デメリットなどを詳しく解説していきたいと思います！
地域限定正社員とは？
地域限定正社員とは、特定の地域で勤務する正社員のことです。転居を伴う異動はありません。エリア限定社員と呼ばれることもあります。パートやアルバイトなどの有期雇用契約ではないので、原則として雇用期間は限定されません。転勤が難しい社員の離職を防いだり、これまでパートや契約社員として働いていた主婦層を採用したりすることができるため、この制度を導入する企業は増加しています。
地域限定正社員の給与について
地域限定正社員の給与は、転居を伴う異動がない代わりに、正社員の９割程度としていたり、あるいは基本給は同じであっても昇給額を低く設定していたりと、企業により、それぞれ異なります。一般的には、正社員と地域限定正社員の給与に差をつけている企業は多いようです。
地域限定社員の特徴
地域限定社員は、働き方改革の流れによって、大手企業をはじめ、さまざまな企業で導入されています。たとえばアパレル業界では、ユニクロ・ワールド・ライトオン・タカキューなどの企業が導入しており、一方で、転勤以外にも給与や賞与といった賃金水準や、役割や出世について正社員とは条件が異なる場合もあり、メリットとデメリットがあります。ここからは、地域限定社員の特徴を解説していきます。
特徴その①：転勤や転居が必要ない
地域限定社員には転居を伴う転勤がなく、転勤があったとしても、現在の住まいから通勤可能なエリアに限定されているので、通勤時間の心配もありません。長期出張はあっても転勤で地元を離れたり、よく知らない街で育児や介護に悩むといったこともありません。結婚後に単身赴任をすることもなく、家族と一緒に過ごせます。住み慣れた街で安心して長く働くことができるため、正社員に比べると、男女ともにワークライフバランスを保った生活がしやすいのが特徴です。
特徴その②：福利厚生が充実している
地域限定社員といっても正規雇用労働者であるため、アルバイトといった非正規雇用とは異なり、正社員並みに福利厚生が充実しています。正社員同様の処遇で、通勤手当等の各種手当があり、社員食堂や保養所等を利用できる場合も多いです。
特徴その③：地域を限定して募集している
企業は雇用する際、通常の正社員と誤解が生じないよう、地域限定社員の採用の際は、勤務エリアを限定して募集を行います。たとえば某大型ショッピングモールでは、北海道・九州・沖縄の店舗を除く、自宅から通勤可能な店舗というように、勤務地を限定して募集しています。地域限定社員の募集かどうか判断するためには、求人内容の勤務地が限定されているかどうかを確認しましょう。名称は法律で定められているわけではなく、企業によってさまざまです。
特徴その④：給料が低いことが多い
転勤のない地域限定社員は、正社員と比べると経験や職務が限定されるといった理由により、賃金規程に別の定めがあり、賃金格差になっている場合もあります。企業の就業規則や雇用契約書によっても異なりますが、正社員に比べてボーナスや昇給や退職金が少なく、年収が低くなることもあります。給料だけでなく、管理職への昇進にも影響する場合があります。
特徴その⑤：解雇される場合がある
勤務地が限定された雇用形態のため、勤務エリアでの事業の廃止や店舗を閉店する場合に、解雇されるといった可能性があります。正社員の場合は異動できますが、地域限定社員は異動ができないからです。しかし、事業所が閉鎖されるからといって、必ずしも解雇が有効になるわけではありません。判例上も地域限定社員であることだけを理由に配置転換可能性がないとして、解雇することは難しいとされています。
特徴その⑥：仕事がマンネリ化しやすい
地域限定社員には転居を伴う転勤がなく、同じ事業所で長く働くことになります。同僚の顔ぶれや、仕事内容が固定化してしまいがちです。勤務地が変わらないことによって、５年・１０年と仕事をしていても、上司は同じまま、仕事内容もあまり変わらず、社内での人間関係や業務がマンネリ化しやすい、という課題があります。
特徴その⑦：スキルアップが望めない
地域限定社員は、対応可能な業務が限定されていることもあり、正社員に比べるとスキルアップが望めず、モチベーションの低下や、給与格差につながる場合もあります。そうした問題点を踏まえた制度として、社員のライフイベントを変更理由に正社員と地域限定社員との転換制度を設けている企業もあります。入社後も社員の希望に応じて、雇用形態を転換できます。
地域限定正社員の制度を導入した場合に、企業にとっては、社員の離職を防ぐことができるというメリットがある一方で、社員としてはスキルアップがあまり望めないなどのデメリットがあります。もし、自社にこの制度を導入しようか悩んでいるのであれば、しっかりとメリットやデメリットを把握し、その上で判断するようにしましょう！
